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脳で感じてほしい卒業制作 〜日本画コース・石黒さん〜

どうも!
デジタルクリエイションコース3年生のことぶきです。

今回も「京都精華大学展2018 卒業・修了発表展(以下卒業・修了発表展)」についてお知らせしていきますよ〜。
ではさっそくインタビューに応じてくれた、4年生の方の紹介から入りましょう!

芸術学部、日本画コース4年生の石黒 玄季(いしぐろ げんき)さんです。
石黒さんは日本画コースの中でも、1番とてつもなくどデカイ作品を卒業制作(以下:卒制)のために作った方です!


なんと横が約4メートル20センチ、高さは約2メートルもあるそう!
でも大きさとは裏腹に、初めて見たときは落ち着いた雰囲気を漂わせる作品だなーと感心してしまいました。
そうしていたら、早くインタビューがしてきたくなってウズウズ。それでは石黒さんとのインタビュー、スタートです。どうぞ!

– 作品名は?
石黒さん
「心に凪と書いて、「うらなぎ」といいます」

– 木が多く描かれていますが、何か思い入れがあるのでしょうか?

石黒さん
「実は、木を描くのは本当に久しぶりだったんです。でも今回は、卒業・修了発表展がキャンパス内で開催されることもあって、1人ひとりに割り振られた壁面が従来より広かったんです。なので、これだけ大きな作品を描くことができるなら、この大きさでしかできない表現方法があるんじゃないかと考え、自然風景そのものを展示空間に切り取るつもりで、実際に本物の風景が現れるような気迫が表現できたらと思い、思い切って木々を描きました」

– 木が鏡で反射したように、その下から同じ形でうっすら見えるように木が生えているんですが、これは湖か池から生えている木、ということなんでしょうか?

石黒さん
「これは本当にある湿地林の風景で、大阪にあるんですよ。
台風が来る前か来た後の雨が強かった日だったため、木が根元まで水没していたんです。
その日に見た風景は、卒制まで温めていたモチーフでした。
一方で、もしかすれば手に負えないかなとも思ってたんです。これだけ広い風景を描くとなると、小さいカンバスじゃぎゅっと縮小されてしまう。でも今年から卒業・修了発表展がキャンパス内での開催となったので、作品サイズが大きくても問題はなくなった。そこで、意を決して描くことを決めて…。描き上げた今は、もう大満足です」

– 作品を描いていて、1番楽しかったこと、嬉しかったことは?

石黒さん
「この作品は、全ての木に銀箔を貼ってアイロンで焼き、変色させているんです。銀は硫黄で焼くことで硫化してくれるんで、より自然で深い複雑な色味になります。その上から岩絵具を乗せて洗ったり削ったりすると、意図しない色や形が出てくるんで、そこを追求するのが楽しいし、おもしろかったですね」


これは描いたわけではなかったんですね!とても木らしい複雑な模様は、まるで静かに佇みながら生きているように感じられます。

– その描き方は、自分で考えられた技法なんでしょうか?

石黒さん
「いえ、伝統的な日本画の技法です。他に天然石を砕いて調合した絵具を画面に塗る、といった日本画独自の技法もあります」

-日本画にはそういった特有の技法があるんですね! ふと思ったのですが、石黒さんの作品を見た時、日本画というイメージが出てこなかったです。ニワトリがモチーフにされていたり、掛け軸や屏風だと分かるのですが、石黒さんの作品は枝の細かい感じが出ているのと、金箔が貼られていないため、洋画のように感じられました。

石黒さん
「平面絵画というくくりになると洋画も日本画も最近ではほぼ一緒ですね。描き方や画材が違うだけで、それ以外は似ているというか。ただ日本画というカテゴライズができるような、ある程度の要素はあるんですけどね。時代性に応じて時代ごとの日本画が生まれるんだと思います」

– では卒制の作品を描く上で大変だったこと、難しかったことはありますか?

石黒さん
「1番は大き過ぎることですね(笑)パネル3枚分あるんですけど、そもそも1人で作品を移動させることができないし、飾ることもできないので。
画面の大きさに比例して描く気迫や労力がないとできないですし、もう、腕を指揮者のように振って描いていましたね」

– この作品は完成したと聞きましたが、卒業・修了発表展の準備は時間に追われて大変だったのでは?

石黒さん
「いえ、比較的余裕を持って進めていましたね。展示準備に関しても学生が主導していました。展示場所は作業場なので、事前に作業場を片付けなくてはいけないんです。だからそのために、厳密にスケジュールを設けていました。それで必然的にパパッと進んでいった感じですね」

– では石黒さんは自分の作品を観てくださった方に、どう感じてほしいのでしょうか?

石黒さん
「感じてほしいことは特にないですね。理由は僕の経験からあって、物思いに耽る時によく広い自然風景があるところに足を運ぶんですけど、着いた途端何も考えられなくなるんですよ。自分が自然に溶け込んでいくような感じで。それが作品のテーマでもあるんですけど、そういう半ば強制力を帯びたような、包み込むような、取り込むような、そんな自然の作用に前々から魅力を感じていました。
でもそれは、実物に近いスケールの作品じゃないと醸し出せないのではないかと思い、卒業・修了発表展の機会を利用してそれだけの大きい絵画で表現しようと試みたんです。
なので観に来る人に強いて言えば、ボーッとしてほしいなと思っています」

– あんまり何も感じず、「広いな」とか、心の中が静かになる感じですね。

石黒さん
「そういう意味で、心凪というタイトルにしています。心が凪いでほしいという願いを込めて」


奥にある木の姿は、手前にある木よりも薄い色で塗られていて奥行きを感じます。そのおかげで、石黒さんが観に来る人に伝えたいこととしてある、『広い』という感覚がこの技法で表現されていると思いました。
私はこの作品を初めて観た時に心が落ち着いたので、きっと石黒さんの願いは観てくれた人に通じてもらえるはずです!

– 石黒さんは、作品を作るに当たって大事にされているポイントなどはあるんでしょうか?

石黒さん
「作品の制作から完成までの一連の行程を、頭の中でグラフ化しているということです。作品の完成度やテーマに即しているかとか、色味はこれで伝わるのかなど、色んな目標があるんですけど、それらを満たせるようなイメージで描くのを大事にしています。
あまり画風や絵柄は意識していないので、モチーフごとにそれらが違うこともありますね。
でもなにより、1番描くことの感覚として大切にしていることは、<絵を空気にしたい>という意識で描いていることです」

– それは、あまり主張しない作品ということでしょうか?

石黒さん
「そうですね。直接的な主張ではなくて、迫って来るような、控えめな主張というか。そんな表現が近いような気がします。無意識に人が観賞したいと思う作品というか…。なんというか<脳で観てほしい>っていう感じですね」

– 脳で観る、初めて聞きますね。心で観てほしいという方が多いので、おもしろいなと思いました!

石黒さん
「すごい僕、冷たいこと言ったような(笑)でも前描いた作品もそうですが、本作のモチーフである木を描いているイメージはなかったんですよ。『木の図像を借りたナニか』として描いていたので、別に木肌そのものを忠実に描いていたわけではなく、木肌のゴツゴツ感や複雑な色味、それらだけを抽出したいなと」

– でも本物の木っぽいですね!

石黒さん
「ありがとうございます。でもこの木の皮を繊細に描くことは一切していないので、大胆にザッと削ったりしていました」


なるほど!でも意外と大胆に削ったほうが、木肌の荒々しさが感じられて良いですね。

– 最後に卒業・修了発表展に対しての意気込みを教えてください!

石黒さん
「1番は、セイカのどこかのコースにこれから入って来る受験生の、脳と心の刺激になれば良いな、そして何か与えられたらなと思っています。なのでぜひ高校生の皆さん、来てください!」

石黒さん、インタビューありがとうございました!
観に来てくれた人たちの脳と心に響く刺激が、作品を通して与えられるよう応援しています!

そして石黒さんの作品も含め、日本画コースの作品が展示されている場所は、セイカの5号館という校舎にあります。
高校生の皆さんは、先輩の作品で色々なものを感じたついでに、将来通うかもしれない校舎の様子を見てみるのも良いかもしれませんね。
ちなみに京都精華大学展2018 卒業・修了発表展は、2018年2月14日(水)〜18日(日)に学内で開催。10時〜17時まで展示されているので、1人や、友達と、家族でも、ぜひ来てくださいね!

ここまで読んでくださりありがとうございました〜。
それではまた次回!


学生ライター 中野壽央莉(デザイン学部 デジタルクリエイションコース3年生)

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